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涙と言えば

雑記

 部屋の掃除をする。

 

■ピアノ教室のプログラムを見つける。

 小学5年生のころ、レースとお花がふんだんにあしらわれた淡い黄色のドレスを纏って、白い靴を履いてNazarethのbatuqueを猛スピードで弾いた。ひとつ年上のSちゃんに勝ちたくて勝ちたくてしょうがなかったが、彼女がその後に弾いたSchumannの飛翔を聴いて、どうしても届いていないことが解ってしまい、一人でお手洗いに籠ってドレスを涙でぐしゃぐしゃにした。

 のちにピアノサークルに入って上手な人たちの演奏をたくさん聞くことになったけれど、私にとっての憧れのピアニストと言えばやっぱりSちゃんだし、今でもSchumannを弾くのはほんの少し抵抗がある。

 

■壁に掛けられた油絵の埃を払う。

 それは高校3年生のときN君が私のために描いてくれた絵なのだけれど、色彩が暗いねと笑ってしまったし、絵のタイトルを見て「ああ、そんなふうに思われていたんだ」なんて考え込んでしまった。「卒業したらピアノや読書が忙しいとか言って、会ってくれなさそう」と言われたけれど、実際に毎日忙しく稼働しているのは希望の進路を歩んで軌道に乗った君の方なので、なんとなく今の私では会うことができないし、油絵の裏に書かれたメッセージを読んで、高校生のころずっとN君に勝ちたがっていたことを思いだした。

 

■鏡を磨く。

 自分の顔を眺めながら、そういえば最近、鼻がますます尖ってきたなあ、と思い体重計に乗ると、今月に入ってから体重が3.5キロ落ちていることが判明した。日ごろ自分の体重にはあまり興味が無く、見た目に甘さが出ていなければそれで良いと思っているので、私の代わりに体調を管理してくれる人がいてくれれば便利だな、と思った。鏡に映る自分を見て、私はこの先も「自分に勝つ」という感覚を持たないまま生きていくのだと悟った。自分に勝つという文言は聞こえは良いものの、終着点が単なる自己満足に向かいかねないので、危険。