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境界があいまい。

日記

 都内は地下と地上の境があいまいだ。上野駅を出て横断歩道を渡り、吹き抜けになっている建物のエスカレーターを昇ってお店に入った。夕食を済ませた後、さらにエスカレーターを昇ると上野公園に抜けることができて驚いた。ここには何度も訪れているはずなのに、未だに造りがよく分かっていなかったのだ。

 少し歩くとツツジがあちこちに咲き乱れていて、初めてこの花の存在の多さに気が付く。日本の植え込みの9割はこの花が占めているに違いない。冬になったらツツジのことなんて誰もが忘れてしまうのだろうなあ、などと考えていると、本を読みながらサクサク歩いている人とすれ違った。足取りに一切の迷いが無かったので、おそらく彼の身体が人と衝突しない道を記憶しているのだろう。頼りになるナビは自分の身体感覚だなんて、なんだか少し格好良い。それにしてもウォーキングしながらの読書はすごくはかどりそうだと思った。

 噴水の前では、自転車で飛び上がる練習をしている人がいた。軽やかに走り回る、小さな未来のアスリートがいた。その近くで、オタ芸の練習をしている人たちがいた。色とりどりのサイリウムの光が、滑らかな曲線を描いては速やかに闇に溶けていった。各々が自分たちの世界に没頭していた、静かな空間だった。

 私たちはベンチに座りながらしばらくSNSや音楽の話をした。バブルが崩壊し、ゆとり教育にすっぽり浸かりきったのちに、教育方針の失敗が大々的に取りざたされた自分たちの世代は、大抵の人が安定を求めて生き急いでいるかのように感じた。もしかすると、平均初婚年齢も早まるかもしれないなあ、というしょうもない予感を、ひしひしと肌で感じている。