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2016/05/28

 Mと待ち合わせをした。澄んだ空気をとおして、街の輪郭がキラキラと浮かび上がり、あたりは緑と軽やかさに満ちていた。彼女と会って話ができることは嬉しい。陽気に踊っている世界を二人で一緒に覗くことができるからだ。

 

 林檎の香りを小瓶に詰めてプレゼントすると、「レナって本当に女の子らしいんだね!」と彼女は驚いていた。普段の私との会話では女性らしさを全く意識しないけれど、ふとした拍子に、ピアノを弾くこと、読書をすること、ものを作ったり絵を描くのが好きで、美術館にも足を運ぶこと、ロングヘアーで、高校生の頃は毎日リボンをつけていたこと、ワンピースばかり着ること、それらの私をかたどっている特徴が満ち潮のように一気に押し寄せてきては、驚かされるらしい。

    いっぽうMは、足が速く、ショートカットがよく似合い、Rockが好きで夏フェスに毎年通い、歯に衣着せずハキハキと話す。ふと疑問に思って「私たち、どうして仲良くなったんだろうね」と彼女に訊いてみると、「教室でレナが『博士の愛した数式』を読んでいて、話しかけたのがきっかけかなあ」と答えてくれた。でも、残念なことに私はその場面を全く覚えていなかったので、しょうがなしに記憶喪失のフリをして弁解した。

 

 次に行く場所を決める予定だったので、事前に横浜やお台場、日本橋周辺のイベントをいくつか探していたけれど、最終的に「諭してくれる人を探し、自分の人生を聞いてもらいに行く」ことに決まった。なんだかタチが悪い行いな気がして、ワクワクする。

 自分の過去は、好む好まない関わらずに、確かに他人の中に現存しているものだった。そして、私たちは可能なすべての偶然の中からそれぞれの選択をすることが出来ると判って、明るい気持ちになった。彼女に限らず友人と話すと、上手く正気に戻ることが出来るので、今年度は友人(と、私が思っている人)と会う機会を極力増やせたら良い。